ノミ・ダニについて

獣医師によるQ&A

毎回テーマごとに獣医師が疑問をお答えします。
第二回目は、ノミ・ダニについてです。

 

  

 

暑かった夏も終わり、ようやく過ごしやすい季節となりました。

飼い主さんの中には、「春から夏にかけてはノミの予防をしてきたけど、これからの季節、予防は必要ないのでは?」と思っている方も多いと思います。しかし、ノミやダニの危険はまだまだ潜んでいます。

今回はそういったノミ・ダニの危険性についてお話したいと思います。

 

~ノミ・ダニについて~

Q. ノミ、ダニって何?

A. ノミ・ダニは現在では犬・猫の体表に寄生する最も一般的な寄生虫です。

ノミは一般的に、卵→幼虫→さなぎ→成虫という生活サイクルを繰り返します。

動物の体表に寄生したノミの成虫はゴマ粒程度の大きさで、寄生している動物の血液を吸血し卵を産みます。卵は動物の体表から落ちて幼虫へと成長します。

幼虫は周囲に落ちているノミの成虫の糞などを食べてさなぎとなり、さなぎとなった成虫は再び機会を見計らって動物の体表に寄生します。

 

一方ダニは種類が多く、犬や猫に害を及ぼすダニの多くがマダニと言われるグループのダニです。

マダニ卵→幼ダニ期→若ダニ期→成ダニ期という生活サイクルを繰り返し、多くはそれぞれの発育期ごとに異なる動物へ寄生し吸血をします。吸血を行う時期以外は自然の中で生活をし動物に寄生する機会を待っています。マダニは生息する環境にもよりますが概ね2~3mm程度で吸血時にはさらに大きくなる事があります。

 

Q. ノミ・ダニによって引き起こされる病気は?

貧血(ノミ・マダニ)

どちらの寄生虫も動物の血液を吸血して生きているので多数寄生の場合には貧血の危険性があります。

ノミアレルギー性皮膚炎(ノミ)

ノミが吸血する際に唾液から分泌される成分によりアレルギー反応が起こる事があります。

アレルギー反応が起こると動物は激しいかゆみに襲われ、脱毛や2次感染を引き起こし重篤化する場合もあります。

瓜実条虫(ノミ)

瓜実条虫は、多数寄生すると下痢などを起こす事があるお腹の中に寄生する虫の一種です。瓜実条虫の卵を食べたノミの幼虫が成虫になり、犬や猫が体を舐めたりすることによって経口的にノミが体内に入り感染が成立する場合があります。

犬バベシア症(マダニ)

これはバベシア原虫という寄生虫が犬の赤血球に寄生し、赤血球を破壊する事によって重度の貧血を起こす病気で、バベシア原虫を体内に持った(感染している)マダニの吸血によって感染が媒介されます。

猫ひっかき病(ノミ)

これはバルトネラという菌によって人間に起こる病気で、この菌に感染している猫に人が引っかかれたり噛まれたりするとバルトネラ菌は人に感染し、頭痛や発熱、リンパ節が腫れることがあります。猫では感染していても無症状の場合が多いのですが、猫同士ではノミが媒介する事によって感染が成立しています。

これらの他にも様々な病気があり、場合によっては犬や猫の命を脅かす事もあります。

さらには、猫ひっかき病のように動物だけでなく人間に対してもノミ・マダニは様々な病気を引き起こす事が知られています。

こういった病気の予防の為にも、ノミ・ダニの予防はしっかりと行いましょう。

 

Q. ノミ・ダニを見つけるには?見つけたら?

A. ノミの場合

ノミの成虫は体の見えにくい部分に隠れている事が多く、動きも素早い為見つけられない場合があります。もし動物の体表に赤黒いフケのようなものが多くある場合にはそれをくしなど取り濡れたティッシュなどにこすりつけてみて下さい。それが赤く滲んできたらノミの糞である可能性が高いです。日頃からよくブラッシングをしてあげる習慣を心がけるのも予防の一つかもしれません。

またノミを見つけた場合、指でつぶしてしまうと中に入っている卵が飛び散る可能性があるので避けた方が良いでしょう。ノミを見つけた場合は洗剤を入れた水にノミを入れて溺死させましょう。

また、動物を入れていたゲージなどの周辺を含め室内をよく掃除し、その際に使用したタオルや犬や猫が寝ていたシーツなどは一度熱湯に浸けてから洗濯をするようにして下さい。           

A. ダニの場合

ダニはノミと異なり、吸血を始めたらその場所から動く事はありません。これはダニの口から特殊なセメント状の分泌物が出され、皮膚と強固に接着している為です。もしこういったダニを発見した場合は無理に取ろうとはしないで下さい。無理に取ろうとするとダニの体の一部が皮膚に残って炎症を引き起こしたり、病原体を他の動物にうつしたりしてしまう事があります。

ダニを取り除く場合はダニの駆除薬を塗布してから取り除く必要がありますので、難しい場合は病院にご相談下さい。

自宅で取り除く場合は専用のピンセットなどを用意し、素手で触ることは避けるようにして下さい。

 

Q. どういう予防があるの?

A. 最も一般的なものはスポットオンタイプと言われる首筋に滴下するものが有名です。

その他、スプレータイプのものや経口的に飲ませるお薬タイプのものもありますが、ノミだけに効果があったりするものやフィラリアの予防も同時に出来るものなど、動物用医薬品として販売されているものだけでも幾つか種類があり、さらに市販されているものと合わせればかなりの種類があると思いますのでどうやって予防していけばいいのか迷われた際にはお気軽にご相談下さい。

 

最後に

今飼っている犬や猫の体にノミが数匹いたら…どうしますか?

「体にいたのは数匹だし、それさえ駆除出来れば大丈夫!」と思っている飼い主さんがいたらその状況はとても危険です。目に見えるノミ(成虫)が数匹いたとすると、目に見えないノミ(卵や幼虫など)はその10倍以上その環境にいると言われています。

さらに、ノミの繁殖力は物凄いスピードで成虫が寄生してから2日程で産卵を開始します。

また、ノミは室温が13℃前後であれば問題なく卵を産み生活サイクルを送ることが出来るとも言われています。今後、冬になるにつれて外は寒くはなりますがお家の中は充分にノミが卵を産み続けられる環境にあります。

これからのシーズンはペットを連れて行楽に出かけたり、屋外を散策する機会も多くなるかと思いますが、ノミやダニの危険性はまだまだ高いと言えます。

しっかりとした予防を行ってペットを病気から守りましょう !!

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