犬フィラリア症について

獣医師によるQ&A

毎回テーマごとに獣医師が疑問をお答えします。

第一回目は、犬フィラリア症についてです。

 

~犬フィラリア症について~

Q. 犬フィラリア症って何?

A. 犬フィラリア症は犬フィラリア(犬糸状虫)という寄生虫が、最終的に犬の肺動脈や心臓(右心室)に寄生することによって引き起こされる心臓の病気です。感染してしまった場合、血液の流れが悪くなる為に様々な症状が現れ、放置した場合には死に至る事もある恐ろしい病気ですが定期的な予防を行う事によって防ぐことが可能です。

 

Q.フィラリアって?

A. フィラリア(犬糸状虫)は寄生虫の一種で、大きな分類をすると下痢などを起こす回虫と同じグループ(線虫類)に属しています。どんな形かと言うと…そうめんのような白くて細長い虫です。子虫(ミクロフィラリア)の状態だと肉眼では見えない程の小ささですが成虫になると17~28㎝程の大きさにまで成長してしまいこれが心臓の中に住みついてしまいます。

 

Q. どうやって感染するの?

A. ご存じの方も多いと思いますが犬フィラリア症は蚊が媒介することによって感染が成立します。

  1. 感染している犬から蚊が吸血をする(フィラリアに感染している犬の血液中に子虫がたくさんいます)
  2. 吸血時に移動した子虫が蚊の体内で感染力を持つまでに成長する      
  3. 感染力を持った蚊が他の犬を吸血する際に皮膚から侵入すると感染が成立します
  4. その後、フィラリアは犬の体内で成長し続け、最終的には血管内に侵入して心臓(右心室)や一部の肺動脈に寄生し成虫となった後に子虫を産み始めます。

このような流れで感染が成立します。それ故フィラリアに感染した犬の発生が多い地域では、蚊による媒介のリスクもより高いですから特に注意が必要です。

 

Q. どんな症状が出るの?

A. フィラリア感染犬の多くは慢性経過をたどる事が多いと言われています。慢性経過を辿った場合感染初期には無症状で過ごす事が多いようですが、フィラリアが心臓に寄生することで物理的に血流が障害されたりフィラリアの虫体からの分泌物の影響などによって心臓に多くの負担がかかってしまう為徐々に心不全の症状が現れてきます。

一般的にはゼーゼーとした咳をするようになったり、運動やお散歩に行きたがらないような症状がよく見られますが虫体の数や大きさによっては貧血や体重減少お腹に水が溜まる(腹水)、さらには 肝臓や腎臓など全身の重要な臓器の機能不全を引き起こす事もあります。急性の経過を辿った場合大静脈症候群と呼ばれ突然の赤ブドウ酒様の尿(血色素尿)や循環不全の症状(呼吸困難や虚脱など)が見られ、重篤な場合が多く外科的に虫体を摘出する必要があります。

Q. 治療は?

A. 大きくわけて虫を直接取り除いてしまう外科的な方法と内服によって虫を駆除する方法の2種類があります。 虫体の数や症状の程度によっても治療法が異なってきます。外科手術になれば もちろん麻酔をかけなければなりませんし内服による治療もワンちゃんにとっては通常の予防より負担が大きいものになってしまいます。

そうならない為にもしっかりとした予防と正しい知識を持つようにしましょう。

 

~予防編~

Q. 犬フィラリア症を予防する為には?

A. 予防薬を投薬されている飼い主さんはご存じかと思いますが現在は毎月1回1カ月間隔で犬フィラリア症予防薬を投与(経口的に)するものが主流となっています。他にも1日間隔で投与するものやスポットタイプなどがあります。

また、経口的に投与するものでも錠剤タイプのものからワンちゃんが好きなビーフ味タイプのものなど様々な種類があります。

フィラリア予防薬を投与する時期について お話したようにフィラリアは蚊が媒介する感染症ですので蚊が発生する時期には予防薬の投薬が必要となりますが、投与の時期が重要です。

基本的には蚊が多く発生する4月から蚊の発生が終息する11月までが投薬期間となります。(地域によっては差がありますが・・・・)

経験がある方もいるかもしれませんが、1カ月分だけ飲ませるのを忘れてしまったり11月頃の寒くなってきた時期に投薬をやめてしまう事ってありませんか?

これはフィラリア予防薬の事を理解されている飼い主さんならご存知かと思いますがフィラリアの予防薬は飲ませてから1ヶ月間効果がずっと持続してフィラリアの感染を防いでいるのではなく、1ヶ月間の間に体内に入ってしまった子虫を、心臓や血管に入ってしまう前に駆除するお薬なんです。

そのため、特に最後の投薬を忘れてしまった場合、感染した子虫は体内で成長をし続けやがて心臓に寄生してしまいます。

ですので、投薬の間隔が空いてしまったり、最後の投与を忘れてしまった場合には予防薬の効果が得られない事がありますので確実に予防薬を投与してあげて下さい。

 

投薬の前に…

毎年、一回目のフィラリア予防薬を投与する前には事前に血液検査が必要となります。

これは、冬の間にフィラリアが寄生していないことを確認する為に行います。

※注※ 感染している状態で予防薬を与えることは大変危険です。

感染状態のままフィラリア予防薬を飲ませると成虫から産出される子虫が、一度に大量に駆除されショック症状を起こし最悪の場合は死に至る事もあります。

ですので毎年、年初めの血液検査は必ず行うようにして下さい。

犬フィラリア症は指示通りに予防を行う事で防ぐことの出来る出来る病気です。

正しい知識を持ってワンちゃんをフィラリアから守りましょう。

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